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2022/02/20 16:18


ニューデリーの本屋さんで「The Night Life of Trees」を手に入れたのは、2012年頃だった。ゴンド画家たちが描く夜の木々の凄みに圧倒された。帯には「手すきの紙に、手刷りで、手で綴じられているハンドメイドの絵本」とある。そんなものが作られているなんて・・・と衝撃を受けた。手仕事の手間隙をおしまない、これだからインドって底力あるよな、と本屋さんで会計をしながらリスペクトし直した。出版社は、南インド・チェンナイに拠点を置くTara Books。以降、本屋さんに出入りするたびにTara Booksの本を探すようになった。
Wall Art Festival 2014の招聘アーティストとしてゴンド画家アジェイ・クマル・ウルヴェティさんにアプローチするために、彼の連絡先を情報の海から探し出し、会いに出掛けた。インド中部に暮らす先住民・ゴンド族。彼らの村に訪れたときに驚いたのは、土壁の美しさだった。毎日手入れされる土間には、神様がいつきてもいいように、と御座の絵が施される。

ある家にお邪魔したときに、おばさまと娘さんがいらした。ジャンガル・シン・シャム(Jangarh Singh Syam)さんの奥様と娘さんだった。稀代のゴンド画家・故ジャンガルさんは、パタンガル村で吟遊詩人の家系に生まれた。それまで土壁にレリーフで表現されてきたものを、森の植物、動物たち、自分たちの心の中にいる神様の姿を紙やキャンバスなど、持ち運び可能な媒体に描いたパイオニアだ。彼の制作が、今を生きるゴンド画家たちの礎になっていると言っても過言ではない。
その夜、吟遊詩人のおじさんが歌を歌いにやってきてくれた。「森にいる私たちの神様は、歌と各人の心の中にいるんだ。その姿は想う人それぞれなのだ」と教えてくれた。聴かせてくれた詩は部族の言葉で理解できなかったけれど、弦楽器の音色にのせて滔滔と流れていった。今目の前に、ジャンガルさんがいたら、その詩について、どんな話を聞かせてくれるだろうと想像する。

この「Dancing Tiger」は、Tara Booksが偉大な画家であったジャンガルさんのことを皆の記憶に残しておきたい、とシルクスクリーンとして復刻させた作品だ。

何かを問いかけられているような、はたまた、受け入れてくれているような印象を私はうける。
みなさんはどうだろう?
作品について詳しくはこちらの販売ページをご覧ください。
ツォモリリ文庫 hamao

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